地球一環境に取り組む企業を目指す？米国アマゾン社の気合の証「 The Climate Pledge」

03/08/2024 BY Feisty Staff

つよくあかるくたくましく生きる人の心と体の糧となる情報を発信している GoFeisty! 今日は、シアトルのイベントセンターとして有名な Key Arena （キーアリーナ）のネーミング・ライツ（命名権）を、あの Amazon （アマゾン）が取得し、そのあとどうなっちゃったのか？を地元シアトルからお伝えします。

シアトルに来たら誰もがのぼりたくなる（に違いない）スペースニードルは、シアトルが誇る高さ184メートルの展望タワーだ。晴れた日には、遠くにレーニア山やカスケード山脈、海に浮かぶ島々など雄大な自然を一望できる。スペースニードルは1962年に開催された万国博覧会の跡地であるシアトルセンターにあり、その足元には「キーアリーナ」と呼ばれるインドア競技場があった。WNBAシアトル・ストームの本拠地として、また数多くの有名アーティストのコンサートが開催されてきたこのアリーナのネーミング・ライツ（命名権）を2020年6月、アマゾンが取得したことがニュースになると、シアトルっ子は「アマゾン・アリーナ」の出現を予想し憂いを抱いた。

イチロー選手が活躍していたマリナーズのスタジアムも保険会社の名前から、携帯電話会社の名前に変わってしまった。地元民としては、愛するスポーツチームの本拠地に、愛するスポーツチームとは無関係の企業名がついていて、それが大人の事情でコロコロ変更されるという状況が忍びない。

「いよいよ、来たか」
「アマゾン、おまえもか」

予測はしていた。アマゾンはお金ならたっぷり持っている。次から次へと新機軸を打ち出し多種多様な業界に進出している。そのうえ、シアトルが本拠地だ。地元のアリーナに自社の名前のひとつでもつけておきたくなるであろう。

しかし、シアトルっ子の予測は、はずれた。
自社名を冠にするために莫大な資金を投じ、宣伝のためにネーミングライツを買うのが当たり前なはず。だが当時のアマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏は、莫大な資金は投じたが、自社名「アマゾン」ではなく、自社の環境問題に対するコミットメント＆ビジョンをアリーナに命名した。

誰も想像していなかった名前がついた。その名は「Climate Pledge Arena」。

Climate=気候。Pledge=誓約。
「気候への対策が必要であることを常に思い出させる存在になってほしい」という願いと、アマゾンの環境問題に対するコミットメントを表すネーミングであった。
さすがアマゾン、斬新である。
アリーナに命名するほどのアマゾンの思いとは？
アマゾンは、どのように環境問題に取り込んでいくつもりなのだろう。

Climate Pledgeとは
アマゾンがアリーナに命名したClimate Pledge とは、2019年にアマゾンが署名した The Climate Pledge （気候変動対策に関する誓約）のことである。この誓約は、気候変動対策に関する新しい枠組みであるパリ協定が採択した2050年二酸化炭素排出量の実質ゼロ化（「炭素ゼロ」）達成目標を10年前倒しの2040年までに達成するというもの。アマゾンは世界初の企業としてこの誓約書に署名をした。

The Climate Pledge に署名するには、以下のコミットメントが求められるという。
（アマゾンプレスリリースよりhttps://amazon-press.jp/Top-Navi/Press-releases/Presselist/Press-release/amazon/jp/Corporate/20190920_Climate-Pledge/　）

・温室効果ガス排出量の定期的な計測と報告をする。
・効率改善、再生可能エネルギー、原材料削減、その他の炭素排出量削減戦略など、本質的なビジネス変革やイノベーションを通じ、パリ協定に沿った脱炭素化戦略を実行する。
・本質的かつ永続的で、定量化ができる社会に有益なオフセットを追加し、残りの炭素排出をカーボンニュートラル化し、2040年までに年間炭素排出量の実質ゼロ化を実現する。

2015年に国連でSDGsが採択されて以来、経済行為だけを突き進むことは社会規範に反することを自覚している企業が増えている。しかし、環境問題に対し、どのレベルのことをどのように計画して進めていけばいいのか、指針がないと感じている企業も多い。そこへ、アマゾンが示してくれた。世界中の人々に大量消費をさせ、配送のために大量の段ボールやガソリンなどの資源を使用し、環境によいことをしてきたとはいえないアマゾンが Climate Pledge をアリーナの名前にまでして。アマゾンは本気度を明言し地球の気候変動問題に取り組もうとしている。「地球上で最もお客様を大切にする企業」を目指しているアマゾンは「地球上で一番地球を大切にする企業」としてリーダーシップをとろうとしているのであろう。

アマゾンの段ボール、一家に何個あるでしょう？
「年間100億以上の商品を販売する当社と同規模のインフラを擁する企業が、パリ協定の目標を10年前倒して達成できたら、他の企業もその目標を達成できるはずです」とベゾス氏はいう（プレスリリースより）。

アマゾンが、世界の大企業にチャレンジしている。大企業よ、アマゾンを見習って現状に変革をもたらす決断をしようではないか！

アマゾンの気候変動対策
The Climate Pledge に署名したアマゾンの具体的なアクションを紹介しよう。
アマゾンは、「Amazon Sustainability 」https://sustainability.aboutamazon.com/ というウェブサイトをスタートし、地球と顧客のためにサステナブルなビジネスをを構築することを約束し、2040年までに「炭素ゼロ」を達成させるための活動報告をはじめている。以下が目標達成を実現するためにコアとなる活動である。

・100% Renewable Energy by 2025
2025年までに再生可能エネルギーの電力費を100％にする。
・Shipment Zero
顧客へ配達するまでのオペレーションを炭素ゼロにする。
2030年までにまずは50％のオペレーションを炭素ゼロにする。
・Electric Delivery Vehicles
10万台の電気配送車を配備。輸送時の温室効果ガスを大幅に削減する。
・Climate Pledge Fund
炭素排出削減・環境保護のためのテクノロジーやサービスを開発する企業のために20億ドルを投資する。
・Right Now Climate Fund
森林再生プロジェクトと気候変動緩和ソリュ―ションのために1億ドルを投資する。

これが、Climate Pledge Arena！
アマゾンの地球環境問題に対する意気込みがつまった Climate Pledge Arena は、2021年にオープンした。シアトルに新しく創設されたNHL（ナショナルホッケーリーグ）チーム・シアトル Kraken の本拠地となり、前のようにスーパースターのコンサートもここで開催されている。

これは、ブルース・スプリングスティーンのコンサートの模様。

世界初の「炭素ゼロ」施設認定を目指すこのアリーナは、100%再生エネルギーで稼働されることになっている。アリーナ内にはいくつもの「初」施策が計画されている。アイスリンクは雨水を再利用し製氷。雨の多いシアトルにはぴったりの対策だ。そしてNHLで最も環境にやさしいアイスリンクを実現させる予定だ。

スポーツ観戦に行くと、ホットドッグやポップコーンを食べ、ビールを飲み、ゴミがいっぱいでるものである。しかし、Climate Pledge アリーナは違う。ゴミ箱は設置されず、リサイクルとコンポスト（生ごみ）のみの回収をするという。使い捨てプラスチック容器も使用禁止。提供する食事も75％は地元の食材で地産地消を目指し、余ったものは地元団体に寄付をするという。

アマゾンが自らを奮い立たせ、また訪れる人たちに「気候への対策が必要であることを常に思い出させる存在になってほしい」との思い出名付けられた Climate Pledge という名のアリーナ。
2021年にアリーナがオープンしたらシアトル新参プロアイスホッケーの試合を観戦し、本当にゴミが出ていないか、雨水で製氷したアイスリンクに違いがあるのか、アリーナ内の全貌をこの目で見てご報告したい。そして、アマゾンがアリーナの名の通り「気候変動対策に関する誓約」を守り目標を達成できているかも。乞うご期待

＜データ元＞
（ベゾス会見Youtube)